前例のないところからの挑戦。
「マルイチオリジナル」商品の反響に
手応えを感じて
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商品づくりの企画段階から関わって、メーカーに原料を供給して商品を製造してもらい、それをすべて買い上げてマルイチならではの商品として小売業や外食産業などのお取引先に販売する。この、「メーカー型卸」事業は、並み居る卸売業の中で当社が存在感を発揮する大きな特徴となっています。マルイチが「メーカー型卸」事業の展開を打ち出したのは、僕が松本支社から東京の水産商品本部(現 第一本部/第二本部)に異動になった2014年頃のことでした。
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そうすると、小松さんが東京で主導されてきた干物の製造・販売は、「メーカー型卸」事業の走りとなるケースだったのですか?
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そんな大層なことだと当時は受け止めていなかったものの(笑)、前例がなかったことは確かです。それまでも当社で干物をつくって納品することはありましたが、保有している魚の活用法の1つ、という側面が強かった。干物として製品にすることを前提に、原料である鮮魚から買い付けるのはほぼ初めてのことでした。
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それまでとはどのような違いがありましたか?
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まず、調達する魚の質が変わります。鮮魚として販売するのと、干物として加工するのでは適する質が異なるんです。当社が磨いてきた調達力を活かせる商品として、国産のアジの開きに着目し、美味しく高品質な干物を製造するためにどのような品質の魚を調達するべきか見る目を養うところから始めました。そして検討の結果、長崎・松浦漁港で水揚げされるアジを使うことにしました。
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メーカーさんと連携される際も、ひと工夫必要だったのではないかと思います。
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原料調達の必要はなく、できた製品は当社がすべて買い上げるのですから、メーカー側のリスクは低いように感じられるのですが、当然メーカーとしても自社製品を製造している訳なので、提携により、マルイチの製品を優先的につくらなければならなくなるのではないか、製品が競合するのではないか、という懸念があったようです。けれど、メーカーさんともWin-Winの関係性をつくれなければ、ビジネスの継続は難しい。製造スケジュールがバッティングしないようにする、サイズもメーカーさんの製品とは異なるものにする、といった調整で、商品づくりを引き受けてもらいました。
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ビジネスモデルの確立に試行錯誤されたのですね。お取引先の反響はいかがでしたか?
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他の卸売企業では扱っていないサイズや価格帯の商品が出来上がったため反響は大きく、様々なお取引先に注文していただくことができました。「マルイチオリジナル」の商品を扱う手応えを感じましたね。
商品力強化を図って
開発した鮭メンチカツ。
毎年注文される定番品に成長
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現在、マルイチでは多種多様な商品をつくっていますよね。例えば、横山さんが携わっている「鮭メンチカツ」。加工度が高く、僕が担当する干物とはまた違う大変さや面白さがあるのではないでしょうか。
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当社が扱っている宮城県産の養殖銀鮭を使ったものですね。この銀鮭は水揚げ後に三枚におろし、中骨の部分を抜いたフィレをお取引先に納品します。残る中骨の部分には骨周りにかなり身がついており、これを有効活用すると同時に惣菜商品のラインアップを増やせないかと企画したものです。それまでの業務の中で連携した加工メーカーさんの中からこうした商品の製造を得意とされているところに声をかけて協働で取り組みました。
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この商品のような惣菜品は、仕上がりの形状や味などをどうつくり込むかも腕の見せどころですよね。
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魚を食べるきっかけづくりができるよう、大人はもちろんお子様にとっても魅力ある商品とすることを目指しました。銀鮭の中骨から外した身を主原料に、玉ねぎなどを加えて調味したほか、中心にチーズを配して美味しさを追求し、何度も試作を重ねてようやく納得のいく商品に仕上がりました。
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グルメを自任する横山さんが納得できるまで試作を繰り返したんですから、かなりいい商品が出来上がったのではないでしょうか(笑)。お取引先からはどのような評価が寄せられましたか?
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おかげさまで好評で、ある小売店では秋の商品として毎年お取り扱いいただいています。定番品として継続してご注文いただけるのはやはりうれしいし、「苦労した甲斐があった」と思いますね。
お取引先のニーズに応えた商品づくりで
「マルイチなら頼める」という信頼を獲得
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より独自性のあるご提案が行えるよう当社が率先して開発に取り組むケースもありますが、特定のお取引先を想定して商品づくりを行うこともありますよね。僕の場合は、「このサイズの魚を干物にすればあのお取引先に提案できる」と考えて商品開発を行ったことがあります。売り場の活性化や新しいお客様の開拓を目指しているお取引先にフィットするのではないかと、既存商品とは少し異なる大きさに仕上がるサイズの魚を仕入れて干物にし、ご提案したところ、狙いが当たって即採用。これも継続して注文していただける商品になっています。
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お取引先から「こんな商品が欲しい」とご相談が寄せられることもありますよね。ある小売店から「鮮魚と惣菜の棚を連動させて売り場の雰囲気を一新させたい」とお話をいただき、それならば旬の食材を使った惣菜品を、と考えました。旬のものとして鮮魚の棚にあるのと同じ食材でつくった惣菜品を並べれば、魅力ある売り場の演出ができるのでは、と思ったのです。そして企画したのがホタテフライ。5月下旬に青森で水揚げされたベビーホタテをフライ商品にして、旬のうちに納品します。通常、フライ商品は海外で加工するので国内に入荷するまでに3~6カ月ほどかかりますが、それでは間に合わない。取引のある国内メーカーと製造手法からタイミングまで入念に打合せ、ホタテ調達後、1カ月ほどで一気呵成に商品化しました。旬のものが加工品として同じ空間に並ぶ、鮮度感のある売り場づくりが実現したとお取引先から大きな評価をいただき、同様の商品づくりを他の魚種でも依頼されるようになりました。
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「こんな頼みごとも、マルイチなら引き受けてくれる」というお取引先の信頼を感じますね。
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これまでにも、ご要望にお応えして調達した魚で煮魚などの商品をつくったり、といった事例がありますので、そういった積み重ねが信頼につながっているのかもしれません。社内外のメンバーとプロジェクトを組んで新商品の開発に取り組む、といった大掛かりなものではありませんが、このように自分の裁量で進められる商品づくりを日常的に行えることも、マルイチで仕事をする面白さだと思います。
水産、畜産、日配品。
それぞれの部門で魅力ある商品を開発し、
食の分野でさらに存在感を高めていく
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商品づくりの際は、お取引先の向こうに存在する消費者を常にイメージするようにしています。すると、どんな商品としてカタチにするべきかも見えてくる。マルイチには全国各地から原料を獲得する調達力と、提携で培ってきた多くのメーカーとの信頼関係がありますから、正直、商品をつくること自体の難易度はそれほど高くない。けれど、それを消費者に喜ばれるものにするのは簡単なことではありません。思うようなものに仕上がらなかったり、なかなか受注を獲得できなかったりと苦労することはあるけれど、その分、消費者に受け入れられて「売れ行きがいいから、また納品してほしい」とお取引先から声がかかると達成感は大きいですね。
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お取引先との商談の中で、「自社ならではの魅力を打ち出したい」という先方のニーズをひしひしと感じるシーンも多いですよね。どうすれば取り扱う商品の幅を広げて消費者にアピールできるかを真剣に考えていらっしゃる。マルイチしか扱わない商品のご提供を通じて、そうしたお取引先の思いを実現できることにとてもやりがいを感じます。自分で言うのもなんですが(笑)、私は食に対する好奇心が旺盛で、いろいろなものを積極的に購入したり食べてみたりすることを心がけています。そうした経験を商品づくりに活かして、その結果お取引先に貢献できるのも、この仕事に充実感を抱く大きな理由になっています。
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「メーカー型卸」の機能をさらに磨き、お取引先に多彩な提案を行って食の選択肢を豊かにする、それが今後の目標です。僕は今、干物をメインに扱っていますが、刺身やフライなど品目を広げたいし、様々な産地や時季の中からその商品に最も適した魚を選んで買い付けるなど調達の機動力も高めたいと思っています。商品づくりに携わる社員がそれぞれより魅力ある商品開発を目指すことで、食の分野におけるマルイチの影響力も高まっていくと思うんです。
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自分が手掛けた商品を知人が手に取って、「あの商品、また発売される?楽しみにしているよ」と連絡をくれることがあり、それが「食卓を豊かにする」仕事の意義を再確認するきっかけになっています。消費者がまた食べたいと思う、そんな商品をもっともっと開発してお届けしていきたいですし、そのために水産に限らず食材についての知識と経験値をさらに高めていきたいと考えています。
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水産品はもちろん、マルイチには畜産や日配品の部門もあり、それぞれ多彩な商品づくりを展開している。商品開発においても刺激的な職場ですよね。これからもみんなで、お取引先、そして消費者に喜ばれる商品をつくり、お届けしていきましょう!